「赤字だと税理士が喜ぶ」
そんな話を聞いたことはありませんか。
理由は単純で、赤字なら法人税が出ないため、税務申告が楽になるからというものです。
しかし、この話には強い違和感があります。
会社が赤字ということは、本来は経営者にとって深刻な問題のはずです。
それを顧問税理士が喜ぶというのは、本当に健全な関係なのでしょうか。
また最近では、「IPO支援+税務顧問」をセットで提供する税理士(公認会計士)や会計事務所も増えています。
一見すると魅力的に聞こえますが、実務では
- レスポンスが遅い
- 相談しても動かない
- IPO支援と言いながら具体的な支援がない
というケースに出会うこともあります。
もし
- 質問しても返事が遅い
- 経営の相談をしても反応が薄い
- 形式的な申告しかしていない
のであれば、正直なところそれはAIでもできる仕事かもしれません。
この記事では、
- 「赤字を喜ぶ税理士」という誤解の背景
- IPO支援と税務顧問のセット売りの問題
- 経営者にとって本当に価値のある税理士
について考えてみたいと思います。
太田昌明(公認会計士・税理士)
2014年 EY新日本有限責任監査法人 入所
2021年 ニューラルグループ株式会社 入社
2022年 株式会社フォーカスチャネル取締役 就任
2024年 太田昌明公認会計士事務所 開業
2024年 太田昌明税理士事務所 開業
2024年 ARMS会計株式会社 設立
2025年 東京税理士会向島支部 幹事(役員)【税務支援対策部】
「赤字だと税理士が喜ぶ」と言われる理由
まず結論から言うと、まともな税理士が赤字を喜ぶことはありません。
しかし、このような話が広まる背景には一定の理由があります。
税務申告の実務だけを見ると、赤字企業の申告は比較的シンプルになることがあります。
法人税が発生しないため、税額計算の複雑さが減るからです。
そのため「赤字の方が申告が楽」という感覚を持つ人がいるのも事実でしょう。
しかし企業の視点で見れば、赤字とは
- 利益が出ていない
- キャッシュが減っている
- 会社の価値が下がる
という状態です。
つまり、企業にとっては非常に厳しい状況です。
もし顧問税理士がこの状況を軽く扱っているのであれば、それは経営を支える専門家としての姿勢とは言えません。
「赤字だから税金ゼロ」は経営として危険な発想
もう一つ問題なのは、
「赤字だから税金がゼロでよかった」
という考え方です。
確かに法人税は発生しないかもしれませんが、企業経営にとって重要なのは税金ではなく利益とキャッシュです。
例えば
- 消費税は赤字でも発生する
- 社会保険料は利益と関係なく発生する
- 銀行評価は赤字で下がる
つまり赤字=税金ゼロ=安心という発想は、企業経営としてはかなり危険です。
税理士が税額だけを見ていると、こうした重要な視点が抜け落ちてしまいます。
IPO支援と税務顧問の「セット売り」の違和感
最近よく見かけるのがIPO支援と税務顧問をセットで提供するサービスです。
一見すると合理的に見えます。
税務も上場準備も同じ専門家に任せられるからです。
しかし実務では、ここに違和感を覚えるケースもあります。
それはIPO支援という看板だけが先行しているケースです。
つまり
- 「IPO支援できます」と営業する
- 税務顧問契約を取る
- しかし具体的なIPO支援はほとんどない
という状況です。
IPO準備は本来、
- 内部統制の構築
- 会計体制の整備
- 監査対応
- 証券会社対応
- 開示体制の整備
など非常に多くの実務が必要になります。
それを単なる税務顧問の延長で提供できるほど簡単なものではありません。
(なお、この点は公認会計士資格を持つ税理士であっても同様であり、相当程度フルコミットしなければ実務として対応するのはかなり難しい領域です。)
動かない専門家は結局一番高い
経営者にとって一番困るのは、料金が高いことではありません。
本当に困るのは
- レスポンスが遅い
- 相談しても動かない
- 判断が止まる
という状況です。
会社の意思決定はスピードが重要です。
もし顧問税理士の返事が遅いと
- 資金調達の判断
- 投資判断
- 契約判断
などがすべて遅れてしまいます。
結果として、「安いけれど動かない専門家」よりも「少し高くてもすぐ動く専門家」の方が、トータルコストは安くなることが多いのです。
人間的なコミュニケーションがないならAIでいい
最近はAIの進化もあり、税務の世界も変わり始めています。
申告書作成や基本的な税務相談の多くは、AIやクラウド会計でもかなり対応できる時代になりました。
そうなると、税理士の価値はどこにあるのでしょうか。
それは
- 経営者の悩みを理解すること
- 状況に応じた判断をすること
- スピード感を持って動くこと
といった人間的な部分です。
もし
- レスポンスが遅い
- コミュニケーションが悪い
- 経営者を応援する気持ちがない
のであれば、
正直なところAIの方がまだ役に立つ場面もあるかもしれません。
本当に価値のある税理士とは
税理士を選ぶとき、料金ばかりが注目されがちですが、重要なのは次の点です。
まず、レスポンスの速さです。
経営ではスピードが重要であり、すぐに相談できる専門家は非常に価値があります。
次に、業務範囲の明確さです。
IPO支援などを掲げている場合、具体的にどこまで対応するのか確認する必要があります。
そして最も重要なのは、経営者を応援する姿勢です。
企業は人が動かしています。
顧問税理士もまた、単なる外注ではなく経営チームの一員に近い存在であるべきだと思います。
まとめ
「赤字だと税理士が喜ぶ」という話は、税理士という仕事をかなり単純化した見方です。
また、IPO支援と税務顧問のセット売りも、実態をよく見ないと単なる営業トークになっている場合があります。
企業にとって本当に価値のある専門家とは、
- すぐ動く
- 丁寧に説明する
- 経営者を応援する
といった人です。
もし顧問税理士との関係に違和感を感じているのであれば、その違和感は、案外間違っていないのかもしれません。

