ファンダメンタルズとは?【株式投資の財務分析についても解説】

よく株式投資で「ファンダメンタルズ」という言葉を聞きますが、一般的に次のことを指します。

  • 「経済の基礎的条件」のことで、経済のマクロ面あるいは個別企業の財務状況などのミクロ面についての指標を意味します。
  • ファンダメンタルズに注目した投資手法をファンダメンタル分析といいますが、これは経済環境や投資対象となる多くの個別企業の投資価値を克明に調べることで、株価は会社の業績などで決まるという考え方です。
日本取引所用語集「ファンダメンタルズ」より

株式投資では、企業の財務諸表を分析することで、将来の株価を予測する分析を指します。

株式投資初心者に役立つように、ファンダメンタルズが少しでもわかりやすくなるよう言及します。

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目次

ファンダメンタルズをわりやすく説明すると?

ファンダメンタルズとは、国や企業などの経済状態を表す基礎的な条件のことを指します。

例えば、次のような指標がファンダメンタルズの一例として挙げられます。

国や地域企業
経済成長率
物価上昇率
失業率
政策金利
天候、災害
政治情勢
売上高
利益
成長率
資産
負債
キャッシュフロー

これらのファンダメンタルズを理解することは、投資やビジネスの意思決定において重要です。

例えば、企業の株式を購入する場合、次のような視点で株価が上がるか下落するかの判断に利用します。

  • 売上高や利益が伸びて成長しているか
  • 競合他社と比べてどの程度優れているか
  • 倒産リスクはどのくらいあるのか

このような視点で、ファンダメンタルズは将来の株価の可能性を見極めるのに役立ちます。

ファンダメンタルズ分析とは?

ファンダメンタルズ分析とは、企業の公表した財務情報や経済指標をもとに将来の株価の動きを予想するための分析のことです。

分析の種類としては、次のようなものがあります。

以下、みていきます。

財務分析

財務分析は、企業の財務諸表を分析し、企業の経済状況を把握するための手法です。

財務分析は、その目的によって次のような分析手法があります。

  • 収益性分析:企業が利益を獲得する能力を分析
  • 安全性分析:企業の財務基盤の安定性を分析
  • 生産性分析:企業の価値創造の効率性の程度を分析
  • 成長性分析:各指標の比率や増減率を分析し、どのくらい伸びているか、改善率を分析

これら分析手法により、「他社との比較」「過去情報と比較」をすることで、経営実態を把握することが可能となります。

これにより、将来の企業経営に向けて改善のポイントと目標の設定に役立つ情報を得ることができます。

また、財務分析は株式投資にもよく出てくる言葉です。

株式投資においては、収益性や成長率などの「将来の株価の予測」や、倒産して株式が紙くずにならないかの「企業の安全性」について把握するのに用いられます。

財務諸表分析の指標

基本的な指標については日本取引所グループの決算短信作成要領・四半期決算短信作成要領などに記載がされています。

一例を見ていきましょう。

収益性分析:企業の利益獲得能力をみる分析

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収益性指標計算式指標の意味
投資収益率  (%)
(ROI)
利益金額÷投資金額×100(Return On Investment)投資金額に対してどのくらい利益を獲得しているか
投下資本利益率  (%)
ROIC
(営業利益×(1-実効税率))÷(株主資本+有利子負債)×100(Return On Invested Capital)企業が調達した資金でどのくらい利益を獲得しているか
自己資本利益率 (%)
ROE
当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(Return On Equity)株主の投資金額によって、企業がどのくらい当期純利益を獲得したか
配当利回り (%)1株当たり配当金 ÷ 株価 × 100株価に対する年間配当金の割合
配当性向 (%)1株当たり配当額÷1株当たり当期純利益×100税引後の利益である当期純利益のうち、どれだけ配当金の支払いに向けたかの割合

安全性分析:企業の支払い能力や負債の状況等、財務基盤の安全性をみる分析

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安全性指標計算式指標の意味
流動比率 (%)流動資産 ÷ 流動負債 × 100流動資産の流動負債に対する割合で、企業の短期的な債務の支払能力を見る尺度
固定比率 (%)固定資産÷自己資本自己資本に対する固定資産の割合で、企業の長期的な支払能力を見る尺度
固定長期適合率 (%)固定資産÷(自己資本+固定負債)×100固定資産が長期的な安定した資金で賄われているか
自己資本比率 (%) 自己資本 ÷ 総資本(他人資本+自己資本)× 100自己資本は返済義務が無いため、高いほど安全性が高い
インタレストカバレッジレシオ (倍)(営業利益+受取利息配当金)÷(支払利息+社債利息等)企業の借入金等の利息の支払い能力を測る
純有利子負債
ネットデット)
有利子負債 – 現金及び預金ネットデットが高くなるほど安全性が低下する
ネットキャッシュ現金及び預金+有価証券 – 有利子負債ネットキャッシュがあるほど安全性が高い

生産性分析:経営資源(ヒト・モノ・カネ)の投資に対して、資源の有効活用の度合をみる分析

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生産性指標計算式指標の意味
付加価値売上高 - (原材料費や支払経費などの外部購入額)企業活動が新たに生み出した価値
労働生産性付加価値 ÷ 従業員数従業員1人当たりが稼ぎ出した付加価値。
分子を売上高や利益などに置き換えることも
総資本生産性 (%)付加価値÷総資本企業経営に投下されている資本からどのくらい付加価値を生み出しているか
経営資本生産性 (%)付加価値÷有形固定資産などの経営資本経営資本からどのくらいの付加価値を生み出しているのか
労働分配率 (%)人件費÷付加価値付加価値の中でどれくらい人件費に分配したか。
分子を利益なえどに置き換えることも
1人当たり人件費人件費÷従業員数高いほど、従業員の待遇が良いといえる

成長性分析:「企業の成長率」「人材育成や研究開発費への成長投資」をどのくらいしているかをみる分析

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成長性指標計算式指標の意味
売上高成長率 (%)売上増加額 ÷ 基準となる年の売上高×100
ex)(当期売上高 - 前期売上高)÷ 前期売上高×100
売上高の伸び率
●●利益増加率 (%)●●利益増加額 ÷ 基準となる年の●●利益×100●●利益の伸び率
従業員増加率 (%)(当期従業員数-前期従業員数)÷前期従業員数×100従業員数の増加率であり、採用が増えているほど事業が好調ともいえる
一株当たり当期純利益
EPS)
当期純利益÷普通株式の期中平均発行済株式数企業を評価する際に使われる指標のひとつで、企業がどのくらい効率よく利益を上げているのか

その他の分析

その他の分析は、財務分析の指標以外を用いて、その増減率により「国や企業が成長するか停滞しているか」を分析します。

◆分析の目的

国の経済状況や中央銀行関係者の言動などから、今後の「為替」「金利」「株価」等は、上昇するのか、下がっていくのかを考えるため。

その他の分析対象には、以下のようなものがあります。

  • 中央銀行の金融政策
  • 経済指標(経済成長率、GDP、雇用統計など)
  • 需要と供給
  • 要人発言(政府コメントや著名経営者のコメントなど)
  • 地政学的リスク(天候、治安など)

政府の為替介入や経済指標の動向、中央銀行(日銀)関係者からのコメントから分析を行い、中央銀行による金融政策や為替政策の動向を探っていくのがオーソドックスなやり方です。

分析対象の例(中央銀行の金融政策)

例えば、投資の世界でよく目にするもので「政策金利」があります。

中央銀行(日銀)は景気を調整するために政策金利を設定し、不景気時には金利を引き下げて経済活性化を図り、好景気時には金利を上げて過熱を防ぎます。

これが金融緩和政策と金融引き締め政策であり、日銀の政策金利の動向は日本の経済活動に大きな影響を与えており、株価や為替レートなどの各種経済への影響も無視できません。

金利が変わってくると、個人の住宅ローン借入や、企業が固定資産なのど設備投資のために銀行借入を行う意思決定にも影響を与えてきます。

これにより、金利負担による家計の消費活動の停滞、企業の成長投資の抑制等への影響があり、経済に影響を与えます。

上記のような財務諸表以外の指標を用いて、経済環境や企業の市場環境等を分析・対策をするのが、財務分析以外の「その他の分析」になります。

(参考:日銀「金融市場調節方針の変遷」

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析との違い

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析の違いは主に次の通りです。

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項目ファンダメンタルズ分析テクニカル分析
利用データ財務データ株価
手法企業の公表した財務情報や経済指標をもとに、将来の株価の動きを予想株価チャート(価格や出来高の推移)をもとに、過去の推移から将来の株価の動き(相場パターン)を予想
目的「割安株」「成長株」を発見し、投資判断を行う過去のチャートをグラフ化し、チャート形状より売買サインを見つけて投資判断を行う
投資期間中長期投資に多い短期投資に多い
メリット将来性、安全性を可視化できる
一時的な相場変動に惑わされない
投資判断を数値化しやすい
損切りラインを設定しやすい
チャートのみに集中すればいい
経済的知識が不要
手法が多い
パターン分析が主であり、分析の手間が財務情報より少ない
デメリット分析に手間がかかる
短期的な投資には向かない
プロ投資家の情報量には勝てない
相場が常に動くため、専門デイトレーダーには勝てない
一時的な相場変動により予想不能になる
将来が過去パターン通りになるとは限らない
将来のリターンを見た取引ができない
チャートの解釈に個人差がある

(参考:金融庁 審議会・研究会等資料 「日本証券業協会【投資入門】」)

テクニカル分析の指標

テクニカル分析の指標としては、一般的に次のようなものがあります。

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項目トレンド系指標オシレーター系指標
利用シーン順張り投資逆張り投資
利用方法相場のトレンド(流れ)に沿った投資法に利用相場のトレンド(流れ)に逆らった投資法に利用
投資方法株価が上昇しているときに買い、人気が離散して値下がりしているときに売る相場環境や市場人気を読み、上げ相場の時に売り、相場環境が悪化して人気がなく値下がりしているときに買う
指標の例移動平均線
一目均衡表
ボリンジャーバンド
RSI
ストキャスティックス
サイコロジカルライン

(参考:日本証券業協会「逆張り投資・順張り投資」)

ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析のどっちが良いのか?

分析手法の違いなので、どちらが良い悪いということは言えません。

しかし、個人的には次の表の比較よりファンダメンタルズ分析を主軸に据える投資方法をおすすめします。

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項目ファンダメンタルズ分析テクニカル分析
メリット将来性、安全性を可視化できる
一時的な相場変動に惑わされない
投資判断を数値化しやすい
損切りラインを設定しやすい
チャートのみに集中すればいい
経済的知識が不要
手法が多い
パターン分析が主であり、分析の手間が財務情報より少ない
デメリット分析に手間がかかる
短期的な投資には向かない
プロ投資家の情報量には勝てない
相場が常に動くため、専門デイトレーダーには勝てない
一時的な相場変動により予想不能になる
将来が過去パターン通りになるとは限らない
将来のリターンを見た取引ができない
チャートの解釈に個人差がある

個人が働きながら余剰資金(余資)を運用するにあたっては、中長期投資が基本になります。

故に、大きな損失を避け、堅実に積み立てて投資をしていくには、ファンダメンタルズ分析の方がおすすめします。

ファンダメンタルズ分析は物凄く難しそうですが、株式銘柄を絞って、買いたい業界(興味がある、好きな業界)や企業に限定をして分析を行えば、ハードルは大分下がります。

また、経済や世界情勢については毎日ニュースや新聞を見ることで養われていくので、好きなニュースから始めていき、苦手意識を持つ必要はありません。

範囲を情報の広げすぎず、情報の海に溺れないようにポイントを絞って分析することが重要です。

例えばですが、定期預金の代わりに長期投資目的で購入した株式について、企業が倒産してゼロになるリスクを避けたい場合、安全性分析の比重を高めて行うことが考えられます。

一方で、伸びる企業で将来の株式売却益を狙いたい場合は成長性分析を行ったり、配当を狙いたい場合は収益性分析で配当原資の利益を生み出す効率性と配当性向などに着目するといった切り口が考えられます。

注意点としては、いきなり大金を投資するのではなく、各人のスタイルを確立して株式投資に慣れるまでは、失っても生活に困らない少額投資で実践し、勝率と利益を少しずつ増やしていくことから始めてください。

テクニカル分析のデメリット

上記の比較表より、テクニカル分析にはデメリットがあります。

例えば、過去の傾向から外れた事象(新型コロナウイルス、リーマンショック、震災、戦争、不祥事など)が発生すると対応ができなくなります。

また、テクニカル分析は1日に何度も取引を行うデイトレーダーがよく利用し、1分1秒で売買が行われたり、機関投資家やヘッジファンドが入ってくると、個人では太刀打ちできません。

さらに、ファンダメンタル情報が無視されるため、過去の傾向から外れて株価が下落基調になるとファンダメンタルズの適正水準まで株価が下落するリスクが高く、その結果損失が膨らむ可能性があります。

上記の例より、個人投資家にとっては、テクニカル分析に頼る手法は危険だと考えます。

勿論、売買タイミングや株式の需給関係を分析するのには参考になります。

しかし、個人での中長期投資については、ファンダメンタルズ分析を主軸に投資判断を行うべきです。

何よりも避けるのは大きな損失です。

一般的に損切をちゃんと実行できる人は限られています。

多くの人は「回復するかも」と塩漬けになり、みるみる損失を拡大させます。

損切ラインを明確に定めるためにも、ファンダメンタルズ分析に基づくマイルール(損切りライン)を決めることが重要です。

ファンダメンタルズ分析は意味がないのか?

ファンダメンタルズ分析は、上述のテクニカル分析との違いで見たとおり、大いに意味があります。

ファンダメンタルズ分析に意味が無いと言われているのは、次の要因が挙げられます。

  • 多くの市場参加者が分析して理解している内容は、相場にすでに織り込まれているので、これ以上分析しても意味が無い
  • 財務諸表分析やニュースの勉強時間が足りない
  • ファンダメンタルズ分析の予測通りに株価が動かないので、利益確定まで時間がかかる。

これらはファンダメンタルズ分析のデメリットとも言えますが、個人的にはテクニカル分析のデメリットとの比較で、ファンダメンタルズ分析の意味はあると考えます。

ファンダメンタルズとFXとの関係

ファンダメンタルズ分析を行わないと思わぬ損失を被ることから、ファンダメンタルズ分析とFXには関係があると言えます。

FX(外国為替証拠金取引)

外国為替証拠金取引は、証拠金を差し入れて、日本円と米ドルなど、2つの国の通貨の為替相場を予測して売買を行う金融商品です。

外国為替を英語で“Foreign Exchange”と表すことに由来して、外国為替証拠金取引は、通称、「FX」などと言われます。

金融庁「外国為替証拠金取引について

FX取引は、少額の資金で取引が始められ、投資金額に比べて大きな額の取引を行うことができます。

資金効率が良い取引である反面、証拠金以上の損失が生じるおそれがあり、元本も利益も保証されない取引です。

このため、大損をしないために、ファンダメンタルズを用いて対策をすることが考えられます。

FX取引においては国の通貨に対する金融投資となるため、一般的に主要国の政策金利や金融政策の動向、金融政策の決定に影響を与えることが多い経済指標の結果などの指標が分析の対象となります。

よくある質問

「ファンダメンタルズ」とはどういう意味ですか?

このファンダメンタルズとは、一般的に次のことを指します。

  • 「経済の基礎的条件」のことで、経済のマクロ面あるいは個別企業の財務状況などのミクロ面についての指標を意味します。
  • ファンダメンタルズに注目した投資手法をファンダメンタル分析といいますが、これは経済環境や投資対象となる多くの個別企業の投資価値を克明に調べることで、株価は会社の業績などで決まるという考え方です。
日本取引所用語集「ファンダメンタルズ」

ファンダメンタルズとはどのような指標ですか?

ファンダメンタルズは株式投資でよく出てくる単語であり、主に企業の財務諸表を分析するための指標となります。

指標の例としては次のようなものがあります。

  • PER(株価収益率)
  • PBR(株価純資産倍率)
  • ROE(自己資本利益率)
  • ROA(総資産利益率)
  • 自己資本比率
  • 時価総額

ファンダメンタルズを日本語に訳すと?

経済の基礎的条件」と訳され、経済のマクロ面あるいは個別企業の財務状況などのミクロ面についての指標を意味します。

テクニカルとファンダメンタル どっち?

個人的にはファンダメンタルズ分析をおすすめします。

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項目ファンダメンタルズ分析テクニカル分析
利用データ財務データ株価
手法企業の公表した財務情報や経済指標をもとに、将来の株価の動きを予想株価チャート(価格や出来高の推移)をもとに、過去の推移から将来の株価の動き(相場パターン)を予想
目的「割安株」「成長株」を発見し、投資判断を行う過去のチャートをグラフ化し、チャート形状より売買サインを見つけて投資判断を行う
投資期間中長期投資に多い短期投資に多い
メリット将来性、安全性を可視化できる
一時的な相場変動に惑わされない
投資判断を数値化しやすい
損切りラインを設定しやすい
チャートのみに集中すればいい
経済的知識が不要
手法が多い
パターン分析が主であり、分析の手間が財務情報より少ない
デメリット分析に手間がかかる
短期的な投資には向かない
プロ投資家の情報量には勝てない
相場が常に動くため、専門デイトレーダーには勝てない
一時的な相場変動により予想不能になる
将来が過去パターン通りになるとは限らない
将来のリターンを見た取引ができない
チャートの解釈に個人差がある
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この記事を書いた人

公認会計士
2014年 EY新日本監査法人 入所
2021年 東証マザーズ(現:東証グロース)企業 入社
2022年 東証グロース企業子会社取締役 就任
2024年 太田昌明公認会計士事務所 開業

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