全国健康保険協会(協会けんぽ)から、令和8年3月分(4月納付分)以降の保険料率改定に関する通知が届いています。今回の改定は、健康保険料率の引下げ・介護保険料率の引上げに加え、令和8年4月分(5月納付分)から「子ども・子育て支援金」の徴収が新たに開始される点が大きな特徴です。給与計算実務にも直接影響しますので、東京支部の数字を中心に整理してお伝えします。
改定のポイント(東京)
- 健康保険料率:9.91% → 9.85%(0.06%引下げ・全国平均保険料率の0.1%引下げ効果を含む)
- 介護保険料率:1.59% → 1.62%(0.03%引上げ・全国一律)
- 子ども・子育て支援金率:0.23%(令和8年4月分から新設)
- 厚生年金保険料率:18.300%(変更なし)
健康保険料率の引下げ
東京支部の健康保険料率は、現行の9.91%から9.85%へと0.06%引き下げられます。なお、新料率9.85%のうち、6.61%が加入者の医療費等に充てられる「基本保険料率」、3.24%が後期高齢者医療制度への支援金等に充てられる「特定保険料率」となります。
40歳から64歳までの介護保険第2号被保険者の方は、健康保険料率(9.85%)に介護保険料率(1.62%)が加算され、合計11.47%が適用されます。
介護保険料率の引上げ
介護保険料率は、現行の1.59%から1.62%へと0.03%引き上げられます。介護保険料率は全国一律で適用されますので、東京支部に限らず全支部で同じ料率となります。健康保険料率と同じく、令和8年3月分(4月納付分)から新料率に切り替わります。
子ども・子育て支援金率(0.23%)が新設
令和8年4月分(5月納付分)から、新たに「子ども・子育て支援金」の徴収が始まります。料率は0.23%で、健康保険料・介護保険料と同様に労使折半となります。
これは「子ども・子育て支援金制度」に基づくもので、健康保険料と一体的に徴収されますが、児童手当の拡充や育児休業給付の財源確保等に充てられる、独立した支援金です。健康保険料率の改定が令和8年3月分からであるのに対し、子ども・子育て支援金は令和8年4月分から開始となるため、適用開始月が1か月ずれている点に注意が必要です。
給与計算への影響(標準報酬月額300,000円・22等級の場合)
例として、標準報酬月額300,000円の方の保険料額を整理します(円未満の端数処理は省略しています)。
- 健康保険料(40歳未満):全額29,550円 / 折半14,775円
- 健康保険料+介護保険料(40歳以上64歳以下):全額34,410円 / 折半17,205円
- 子ども・子育て支援金:全額690円 / 折半345円
- 厚生年金保険料:全額54,900円 / 折半27,450円
健康保険料(折半額)は現行と比較してわずかに減少しますが、介護保険料と子ども・子育て支援金が加わるため、本人負担額の合計は若干の増加となるケースが多くなる見込みです。
実務上の注意点
1. 健康保険料・介護保険料の変更時期
新しい料率は、令和8年3月分の保険料(4月納付分)から適用されます。多くの事業所で採用されている「翌月控除方式」の場合、4月支給給与から控除する保険料(=3月分の保険料)が新料率となります。当月控除を採用している事業所では、3月支給給与から新料率での控除が始まる点に留意が必要です。
2. 賞与に係る保険料
賞与については、支給日が令和8年3月1日以降のものから新料率が適用されます。3月初旬に決算賞与等の支給を予定している事業所では、料率の切替えを見落とさないようご注意ください。
3. 子ども・子育て支援金の徴収開始タイミング
子ども・子育て支援金は、健康保険料・介護保険料より1か月遅れて、令和8年4月分(5月納付分)からの徴収となります。健康保険料率の改定タイミングとはずれていますので、給与計算ソフトの設定変更時期や、4月の給与計算における項目追加についても忘れずに対応する必要があります。
4. 任意継続被保険者の取扱い
任意継続被保険者の方については、令和8年4月分の保険料から新料率が適用されます。在職中の被保険者(令和8年3月分から適用)とは適用開始月が異なる点に注意が必要です。
5. 給与計算ソフト・賃金台帳の見直し
3月分(4月納付分)から控除料率が変わるため、給与計算ソフトの保険料率の更新が必要となります。あわせて、子ども・子育て支援金の項目追加・賃金台帳のフォーマット見直し・従業員への周知など、年度替わりに向けた準備を計画的に進めておくと安心です。
まとめ
今回の改定は、健康保険料率の引下げ(0.06%)、介護保険料率の引上げ(0.03%)、そして令和8年4月から新設される子ども・子育て支援金率(0.23%)の3点が柱となります。健康保険料率の改定は令和8年3月分から、子ども・子育て支援金は令和8年4月分からと、適用開始月が1か月ずれている点が今回の特徴です。
事業主の皆さまにおかれましては、給与計算ソフトの料率設定の更新、賃金台帳・給与明細フォーマットの確認、従業員への周知など、年度替わりに向けた事前準備をお進めいただければと思います。
