「私はどんな人とも仲良くなれます」「誰とでも和気藹々と話せます」。
ビジネス交流会などで、このような(ネットワークビジネスを展開する詐欺師みたいな)人は多々見かけます。
コミュニケーション能力の高さをこうアピールする人は、世の中に少なくありません。しかし正直に言うと、私はこうした言葉をあまり信用していません。
今回は、少し個人的な話も交えながら、「本当に信頼されるコミュニケーションとは何か」について考えてみたいと思います。
「誰とでも話せる人」は、本当に誰とでも話しているか
「どんな人とも仲良くなれる」と言う人は、実際のところ、話しやすい相手を選んで話を続けているだけであることが多いように思います。
人見知りの人なら、こんな経験に心当たりがあるのではないでしょうか。
社交的なタイプの人が、最初は気さくに話しかけてくれる。しかし「あっ・・・、この人は話が弾まないな」と察した途端、すっと離れていき、それきり相手をしてくれなくなる。
つまり、「誰とでも」と言いながら、その「誰」の中に、話の弾まない相手は含まれていないのです。
人とあまり接しない人ほど、こうした空気には敏感です。「どなた様でもお気軽に」という言葉の裏にある「ただし、話しやすい人に限る」という本音は、案外すぐに見抜かれてしまいます。
信頼される人は「話す力」を自慢しない
一方で、まったく対照的な人たちがいます。親身になって相手を理解しようとする人です。
不思議なことに、そういう人ほど「俺は誰とでも話せるよ」という自慢をしません。むしろ、「自分なんかでよければ、話を聞くよ」という控えめな姿勢でいることが多いです。
それは、彼らのコミュニケーションの重心が「話すこと」ではなく「聞くこと」に置かれているからだと思います。
人脈やトーク力を誇る人は、突き詰めると「自分の話を聞いてほしい」人です。
だからこそ、話術をアピールする必要があります。しかし、相手の話を聞くことを大切にする人には、そもそも話術を誇示する動機がありません。「聞くだけしかできないけど」という姿勢で十分だからです。
自分のことよりも相手のことを考えられるので、自己アピールが要らない。そして皮肉なことに、そういう姿勢の人ほど、周囲から「この人ならば」と信頼されていくと感じています。
士業・コンサルタントの仕事も「聞くこと」から始まる
この構図は、私たち士業やコンサルタントの仕事にもそのまま当てはまると感じています。
専門家というと「豊富な知識を分かりやすく話せる人」というイメージがあるかもしれません。もちろん説明力は大切です。しかし実務の現場で本当に問われるのは、その手前にある力、「お客様の状況や不安を、時間をかけて聞き取る力」です。
たとえば、税務や経営の相談では、ご相談者様自身が「何に困っているのか」を最初から言語化できているとは限りません。断片的なお話を丁寧に伺い、背景を理解して初めて、本当の課題が見えてきます。ここを飛ばして専門知識を一方的に話しても、的外れな提案にしかなりません。
「先生に相談するのは敷居が高い」「うまく説明できる自信がない」と感じて、相談をためらっている方は少なくないと思います。しかし、本来それは相談者が心配することではありません。うまく話せなくても大丈夫なように聞くのが、専門家の仕事だからです。
まとめ:「この人ならば」と思われる人に
コミュニケーション能力というと、つい「話す力」に目が向きがちです。しかし、信頼の土台になるのは、
- 相手を選ばず、まず話を聞こうとする姿勢
- 自分が話すことより、相手を理解することを優先する姿勢
- 「自分でよければ」という謙虚さ
ではないでしょうか。
「誰とでも話せる」と誇る人ではなく、「聞くことしかできないけれど」と言える人。私自身も、そういう専門家でありたいと思っています。
当事務所では、まずお客様のお話をじっくり伺うことを大切にしています。お悩みが整理できていない段階でも構いません。税務・会計・M&Aに関するご相談は、下記よりお問い合わせください。
